「不思議の国のアリス」その2

 この物語のどこが特に魅力的か。奇想天外なストーリー、登場人物、細かいディテール。
アリスの主人公としてのずばりな永遠の少女アイコン。
 そして・・・
私には特別好きなシーンがあります。
それは「アリスが兎の穴に落ちていくシーン」
穴はストーンと落ちてしまうのではなく、『ぐんぐん下へ落ちていく』のに、四方の壁が凄い!
『いちめん戸棚や本棚になっていてね。地図や絵があちこちにかかっている。』
アリスは戸棚からママレードジャムを取り出し、中身がからっぽなので別の棚に戻します。
ディズニーのアニメでは炎の見える暖炉やロッキングチェアも登場する。
矢川澄子さんの訳を引用しましたが、矢川さんもこのシーンがお好きだったようで、解説で「兎穴」について約3ページ考察されています。
それによると、ルイス・キャロルはそんなに愛着あるシーンでもなかったそうです。
後年の「子ども部屋のアリス」では大幅カットだそうです。
『作者は何をとち狂ったか』という矢川さんの表現が可笑しいです。
まるで、好きなモノだけに囲まれた「おたく」のような魅力ある壁面の「インテリア」。
兎の趣味なのかなあ。
その本棚にはどんな本が並んでるんだろう。どんな地図や絵がかかっているんだろう。
本好きな私は、中学生のころから想像が尽きないのでした。
 そして、そして・・・
1990年代になって「バーナム博物館」で驚愕する作品に遭遇いたしました。
「アリスは落ちながら」
アリスが兎穴に落ちながら見たモノを細部にわたって説明した短編です。
本棚の書名も、いかにもキャロルっぽいです。
「村の説教二十五」「ビューイック英国鳥類図誌」マーコレー「英国史」「バースの乙女」
etc・・・ずらずら続くのです。
アリスの落ちながらも何考えているかの「想像」も、細かいです。
テニエルの「落ちていく」挿し絵と文章のバランスについても、うーんとうなりました。
とにかく落ちていく現象で22ページです。
私は何度も読んでうっとりしてしまいます。
こういう穴に落ちていく空想は、アリス以上に楽しいのかもしれません。
ルイス・キャロルに読んでいただきたかったですねえ

バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

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不思議の国のアリス (新潮文庫)

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