アルベルト・ジャコメッティ展

小雨混じりの7日に行って来ました。
出かけるのが億劫な空模様で、やっぱり兵庫県立美術館は数人しか入館者はおりませんでした。
約20年前から、漠然と私の好きな芸術家の中で別格だったアルベルト・ジャコメッティ
なんでこんなに「崇めたいのか」自分でも巧く言えません。
でも期待を裏切らない作品群とジャコメッティの人柄でした。
とにかく違いました。
まだ素のキャンバス地に荒く描かれた肖像画。よくよく見ると何度も何度も書き直してモノートン色になってしまったことや、厚塗りでテカテカした質感がわかります。
そうして2,3メートル離れて見ると、モデルとなった人(身近な妻や弟が多い)がキャンバスから抜け出てくるような「生気」がしっかり感じられました。
作家の描いた空想の人じゃなく、ちゃんといる人という存在感がありました。
色彩的にもぱっと見地味だし、美しい絵面じゃないのに不思議ですねえ。魅入られますのです。
彫像は、また独特で「ほっそり」の2乗くらいスマートで、かつ小さいモノが多いです。
絵はがきをUPしましたが、これは全体で150センチくらいあるのに、彫像は10センチくらいです。
巨匠に失礼かもしれないけど、かわいい〜
10センチでもきっちりモデルを表現して股も隙間があるのが凄いです。

 今回は「矢内原伊作とともに」というサブタイトルがあるのですが、彼との友情も感動しました。
ガラスケースにジャコメッティが宛てた手紙や、妻アネットからの「アルベルトシス」の電報も陳列されていました。
ジャコメッティは1957年にパリで矢内原氏と知り合い、モデルを頼むのですが、一日10時間にも及んだ末、帰国予定も延長します。
帰国の日。ジャコメッティは空港で、飛行機が見えなくなるまで見送り、まだ矢内原氏が機上の人のうちに友情に満ちた手紙を書き送ります。(アネットの追伸付き)
まるで霊的な交流さえ感じる「濃い友情」ですね。
もう一人ジャコメッティと親交のあった日本人に「宇佐見英治氏」がおられますが、
彼と矢内原氏も親友で「ジャコメッティについて」という対談集も熱いです。
こんな風に中身の濃いボウイ話を誰かとできたらなあ・・・なんて当時は思いつつ読みました。
でもジャコメッティもお二人ももう亡くなったんですね・・・
 最後に私の大好きな詩が展示されていて、うれしくなりました。*1

蛇足;スイスの切手は「コルビジェ」と「ジャコメッティ」だそうです。
国宝的な人なんですね。