「朗読者」

 本年度のアカデミー主演女優賞は、この本の映画化「愛を読むひと」で主演したケイト・ウィンスレットでした。
6月19日映画公開だそうで、テレビで短い予告を見て、何年も前に古本屋さんで原作である「朗読者」を購入したままなのを思い出しました。
昨日、気が向いて一気に読了。
ケイトさんは、ぴったりだと思います。タイタニックの映画では頑強な体形がお嬢様らしくないと不評でしたが、今回はドイツの36歳独身。過去に強制収容所の看守だったこともわかります。
 裏表紙の「胸を締めつけられる残酷な愛の物語」という大きな字の書評以外、まったく知らないで読んだ本ですが、本当に締めつけられましたよ。
15才の少年が、21歳年上の女性ハンナと偶然知り合い、秘密の逢引を重ねます。
それまで病弱で友人も少なかった彼は、ハンナに恋したことで、どんどん積極的に自分を囲む世界を受け入れていきます。
ハンナと会うときは、まず本を朗読させられるのです。
それも「オデュッセイア」とか「戦争と平和」とか…
ちょっとこの本の選択が、よくわからないなあ。硬すぎるのでは?
 変わってるわーと思いつつ、私の好みのパターンの本だなと軽く読んでました。
少年がいろいろあってーというのが好きなんです。
 ところが、ハンナが姿を消して裁判所で再会してからが、この本の読ませどころでしょう。

 あとがきを読むと、大ベストセラーだそうです。
私も★4つつけたいです。
主人公の少年の心理描写が、丁寧で目に見えるよう。
しかし、ハンナはなぜ秘密を明かさなかったのか?
どうして最後ああーなったのか?
最後は少年は中年になっていて、読者の私は同じ目線で、一生ハンナと関わった気分になりました。

看守時代の彼女に対する裁判で、「あなただったらどうしましたか?」と逆に裁判官に尋ねるシーンが、印象的です。
こんな無知な女性も巻き込まれ、重罪人になる戦争の恐ろしさと、「麻酔薬をうたれたような状態」に陥る裁判。
60年以上たっても、こういうナチス強制収容所がらみの重いシーンもしっかりとドイツは受け入れるんだなあ*1

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)