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絲山秋子「海の仙人」「イッツ・オンリー・トーク」

 書いた順に読みましたが、「イッツー」で文壇デビューの文学界新人賞
「海の仙人」は2年後に芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞してます。
どちらも読みやすく薄い中篇小説ですが、巧い!
登場人物が、私にはとても素敵に見えるし、流れのテンポが小気味良いです。
最初に「海の仙人」を読んだ時あまり作者のことは知らなかったので、読了後はかなり感動しました。
すごーーくかっこいいラストだなあ〜
元々日本の最近の作家に疎いのですが、絲山秋子は注目したいです。
両方とも男前な女性の友情物語です。
けっこう大人風味ですが、私にはどっちもファンタジーだなあっていい意味で思えました。
読後いい夢みたなあって気分でした。

「イッツ・オンリー・トーク」は、ちょっとアピール激しく書いてみました〜っていうアクの強さと初々しさがあって、それも好きなんです。
登場人物が「ファンタジー」そのもののお品揃えです。
EDの議員、うつ病のやくざ、容認し合ってる痴漢、元ヒモのいとこ…
主人公の女性はキング・クリムゾンの「 エレファント・トーク」 好きで(書名も引用)、かなりの車好きだが、イカレテル。
あんまり大きなストーリーはなく、登場人物の魅力で読ませてしまいます。
「社会性を縦軸として魅力を横軸にとったらどうなるだろう。
 私は自分の、EDの議員の、鬱病のヤクザの、元ヒモのボランティアの座標分布を思った。
  たまたまそういう話が判るのが痴漢だというのが不思議な気がした。かれはただ下劣な座標であれば良かったのに、私の考えを理解する珍しい人になってきている。関係のない遠い星を結んで出来た星座を思い浮かべた。」
この文章に作品の魅力が凝縮されている。

 「海の仙人」は3億円宝くじで当たった男の話。
しかし男には一番関係ないような暮らしをしていて、お金じゃ手に入らないものばかり登場する。
恋、友人、つらい過去、自分に最適な環境、病、…
そして「ファンタジー」というそのものずばりな狂言回し的存在の、不思議人も登場する。
何気なく登場するオブジェや事件が、話の節目にちょっとしたアクセントをもつところも巧い!
このストーリーほんとかっこいいなあ

 今は「ともだち」の出来にくい時代だなあと思います。
友達なんて全く不必要な人もいるし。
「共感力」の無い人が増えたとも聞きます。
私は、転勤で関西に住むようになり「ともだちが増えるんだ」と思ってました。
でも、そうとも限らず…
こういう作品を読むと「いい夢みたなあ」って思うのです。

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)