美の巨人たち「クリスティーナの世界」

5月30日放送の「美の巨人たち」一枚の絵は、アンドリュー・ワイエス作「クリスティーナの世界」でした。*1

 この絵は、去年フジTVドラマ「明日の喜多善男」を見た人なら、あーっ!この絵!って思い出す筈。*2
このドラマかなり面白かったのに低視聴率だったそうです。
私も全部欠かさず見てたわけじゃないので再放送を期待しているのですが…
見るからに善人で、不運な主人公は絶望して、11日後の親友の命日に死のうと決めますが。
彼に保険を掛けようと企むもの、善男が疑わなかった前妻や親友の裏の顔など、つぎつぎ心穏やかではない出来事に巻き込まれてしまいます。かれはいつも「クリスティーナの世界」の複製画を持ち歩いているのです。
確か妻とのきっかけになった絵だった気がしますが、私はそのドラマでもとても印象に残る絵でした。

 草原に不自然な形で座り込む、ピンクのワンピースの女性の後姿。彼女の手の先には古い家が丘の上に見える。
後ろ姿なので、とてもイマジネーションの広がる絵でした。
 作者アンドリュー・ワイエスは父も成功した挿絵画家という、お金持ちのおぼっちゃんで才能もありましたが、なぜか障害を持ち全く歩けない姉と、彼女を一生世話した弟の質素な住まいに下宿して、長きに渡って親交を深めるのです。(近所に別荘もあったのに)
クリスティーナは殆ど家から出ない(出られない)一生でした。それに驚いたのは、草地でピンクの服のモデルになった時、クリスティーナは55歳だったそうです。
うーーん背後からの写生なので、ぱっと見ると少女にさえ見えますが、なるほど手は節くれだった中年の手かも。
また、写生のようでありながら、
「この絵をよく見ると近くにあるものも、遠くにあるものも、全てに焦点が合っていてどこもぼやけていないのです。それは、人間の視覚では決して体験できない世界。ワイエスは何故このような描き方をしたのでしょうか?」
テレビの解説より。
弟がガンで亡くなると、一ヵ月後にクリスティーナも亡くなったそうです。
アンドリュー・ワイエスと知り合わなかったら、ひたすら地味にひっそりと埋もれた生涯だったことでしょうね。
姉弟が亡くなった後の、農機具の残る家をワイエスは丁寧に描き続けます。
それは何故?
30分番組では、まだまだ謎の多い「クリスティーナの世界」でしたが、とても魅せられました。