「<キャンプ>についてのノート」

 私がこのエッセーに出会ったのは、ずいぶん前のこと。まだ暇もたっぷりあった学生で図書館で借りました。
スーザン・ソンタグ著「反解釈」という本の中にあるのですが、読んだ時も絶版で後に、札幌の石川書店という古本屋さんで発見した時は狂喜乱舞状態でした。
私は、このエッセーをしっかり頭に入れたくて、特に好きな箇所を書き写したくらい好きだったからです。

 ソンタグは冒頭に「この世には名づけられていないものがたくさんある。そしてまた、名づけられてはいても説明されたことのないものがたくさんある。」と記し、その一例として<キャンプ>という感覚を近代的な感覚として述べている。
それは58項目に及び、それが非常にかっこいい。
何度も読み返したりするけれど、対象が変わったり、サブカルやポストモダンや、趣味も多種多様な時代に移っていったけれど、ソンタグのこの文章にはズレがない。ところどころちりばめられたオスカー・ワイルドアフォリズムも、いまだにニヤリとさせられる。
例えば…
「人間を善いのと悪いのに分けるなんて、馬鹿げています。人間は魅力があるか退屈かですよ」
それは、私には趣味に対する審美眼、嗅覚を磨きなさい!というメッセージであり続ける。
解説にもあるが、彼女の言いたいのは、新しい感覚や感受性であり、感じ方、見方も問題であって、思想、観念、主義の問題ではない。
では、キャンプ趣味とは、なんだろうか?
具体的に沢山挙げているが、ティファニーのランプ、オーヴリー・ビアズリーの絵、「白鳥の湖」、ヴィスコンティによる「サロメ」や「あわれ彼女は娼婦」の演出等々ちょっと残念だけど「過ぎさりし魅惑のモノ感」が。
キャンプの見方の基準は、美ではなく、人工ないし様式化の度合いと項目1掲げられているが、
私にとって、ずばりなのがデヴィッド・ボウイのライブ「ジギー・スターダスト」ツアーであり、翌年の「ダイヤモンドドッグスツアー」なんでした。*1
今だに、それに続く(私目線で)ものが、私の中ではお気に入りなんですね。
ソンタグが書いたのは1964年と思われるが、またしても60年代なのです。この時代はきっと、今より人間のテンションが高かったのだろう。
気力もあったのだろうなあ。
 古書でしかお目にかかれないと思っていたら、再発行されていたんですね!
アマゾンは売り切れ中ですが、他のネット書店では買えますよ。

反解釈 (ちくま学芸文庫)

反解釈 (ちくま学芸文庫)