「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」
ヘンリー・ダーガーの人生と彼の死後発見された膨大な挿絵と小説を元に、一部アニメーション化して紹介したドキュメンタリー映画。
友人のTさんから拝借したのですが、ちょっと衝撃が大きすぎです。
もう買っちゃおうかなあと思ったら、今日「王国」のテキスタルを見つけ家中のカーテンにしてる夢を見ました。
まるで王国の住人になったかのような迫力でした。
ヘンリー・ダーガーの一生は「孤独と寂しさと貧困」だけだと、生前は思われていたことでしょう。
幼年期に両親を次々と亡くし、妹も養女に出され、施設で育った彼は確証もないのに精神障害児の施設に転所されます。脱走の末もっと辛い仕事(病院の清掃人で尼僧にこき使われる)に従事します。
以後ほぼ友人もいなく規則正しく教会に行くほかは引きこもり、81歳で亡くなりました。
これも文章で残しているからわかる一生なのですが、大家さんが「芸術作品」として残された膨大な絵画や書き物を評価しなかったら、それさえ誰も気に留めない老人の一生だったのでしょうね。
少年のナレーションが現実をかたり、大家さんや隣人が思い出をかたり、その間に彼の残した膨大な絵物語「非現実の王国で」のストーリーが展開します。
すると、現実での友人や上司が敵の将軍で登場したり、厳しい絶対服従下にあった子供の頃の施設の体験とかが、物語のベースになっていることがわかります。
主人公7人の姉妹「ヴィヴィアンガールズ」を中心の子供だけの王国と大人の国との戦いは、矛盾点満載ですが、色彩がとても淡くきれいで当然ながら子供たちもレトロなかわいい顔立ち。
誰にも絵画を習ったわけでもないのに、コラージュやトレース、コピーの技術も驚愕です。
教会に行くことはかかさなかった彼は、やはり「絶対服従」という幼児体験から現実も非現実も抜け出せなかったと思います。
ただし、非現実では少女たちを使って、その規律を破る物語を紡ぐのです。
この物語を書いているときだけ、至福の時だったでしょう。
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