「犬狼都市」

とおいとおい昔、札幌に住んでいた頃のこと、
中心街から少し外れた地下にあるこの名前の喫茶店が好きでした。
澁澤龍彦の書名が由来の喫茶店。
階段を下りてドアをあけると「いらっしゃい!」というマスターの声が今も耳に聞こえます。
狭くて4組のボックス席位とカウンターがありました。
当時愛読書は澁澤龍彦だった私は、足繁く通いました。
珈琲の味、カップのカタチ、ピッチャーにはミルクじゃなくて生クリームが入っていたこと。
よく覚えています。
1977年ボウイがイギー・ポップと来日した時、空港で握手した友人がいて、その店で「再現して
もらった」こともありました。
マスターにとってはきゃぴきゃぴしたうるさい客だったでしょう。
あんなに何年も通ったのに、ちゃんとお話したことがなかったのが悔やまれます。
私は物凄く自意識過剰で人見知りで、カウンターでマスターと対面したことさえありませんでした。
当時の私の夢は「澁澤龍彦のようになる」ことだったと思います。
シブサワに関わるものなら心拍数が+20で、お話なんて無理でした。
1980年代になると、お店は移転したのか、私の記憶からも消滅ですが、
とても懐かしいお店です。
確かマッチも凝っていた気がします。
そうそう、お店のBGMは、常に「サラ・ヴォーン」でした。
特に「バードランドの子守唄 」
すっかり私も気に入ってしまい、彼女が来日した時、コンサートに行きましたら、
会場でばったりマスターに出会い、友人が思わず「あっマスターだ!」っと声をかけると
無言で会釈されたことも覚えています。
マスターも人見知りだったんでしょうね

ラヴァーズ・コンチェルト~サラ・ヴォーン・ベスト

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